スモークサーモン製造会社の社員が100円ショップで買える器具を駆使してキャンプでスモークサーモンをつくってみた。
目次
スモークサーモンの製法とは
スモークサーモンの製法には大きく分けて2種類あり、温燻と冷燻と呼ばれています。
簡単に説明をすると、温燻はサーモンに火を通しながら高温で燻製する製法で、冷燻は生のまま低温で燻製します。
一般的に日本のスーパーなどで販売されているスモークサーモンは冷燻です。
冷燻は難しいと言われていて、なぜなら、煙を出すために燻製チップを燃やすと、燻製器内の温度が一気に上がってしまい、サーモンに火が通ってしまうからです。
そんな難しい製法である冷燻を、100円ショップで買える器具を駆使して作れるのかどうか、検証したいと思います。
スモーク器具を購入する
向かったのは、王子サーモン銀座店から20分程度、100円ショップの聖地(と個人的に呼んでいる)上野駅。
ここにはDaisoさんとSeriaさんが近距離で店舗をかまえています。
【購入リスト】
・ボウル(直径20cm)×2
・ゴミ取りネット(台所の水回り用品)
・アルミ食器
・網
計 550円
※ボウルは試作で何度か使用しているので汚れています。
スモークサーモンの極意を学ぶ
スモークサーモンをつくるにあたって、王子サーモンの「レジェンド」と呼ばれる燻製職人に相談をした際の会話を一部ご紹介します。
鮭太郎「スモークサーモンの極意を教えてください!」
レジェンド「燻製の香りは染み込むのではなく、乗るんだよ」
鮭太郎「え???と、言うと・・・?」
レジェンド「つまり、燻製の香りをサーモンの脂に乗せるの」
鮭太郎「・・・・全然わかりません!」
レジェンド「サーモンを燻製前にしっかり乾燥させることが、とっても大事。燻製をする時が難しいと思われがちだけど、本当はその前のサーモンの下処理が重要だし、そこで香り付けが決まると言っても過言じゃない。水分を含んだサーモンを燻製すると、えぐみが出てくる。きちんと温度管理をして適切に乾燥させたサーモンの表面の脂に良質な燻製の香りが乗るんだよ。今は、生のサーモンを燻液っていうものに漬けて香りを染み込ませた、スモーク“風”サーモンが日本に流通している。それは、もはや乾燥も燻製もしていない漬けサーモンみたいなもの。王子サーモンは手間暇かけた乾燥燻製にこだわっている。だから、王子サーモンの名前で記事を書くなら、サーモンの下処理はきちんとしないとダメだよ?」
鮭太郎「わかりましたあああ!(ちょっと怖ええええええ)」
それでは、サーモンの下処理にチャレンジします。
スモークサーモンを下処理する
と、意気込んでサーモンの下処理を始めましたが、さっそく挫折しました。
実は、自宅で幾度となく試作をしたのですが、安定した仕上がりになりませんでした。
理由① 乾燥行程で犠牲にするものがある
理由② そもそも一般家庭で下処理を成功させるのが難しい
まず、①について、扇風機などで室内乾燥させるのですが、部屋中が魚臭くなります! 私は嫌いではないのですが、人によっては少しテンションを下げる要因になるかと思います。
また、②について、自作のソミュール液に一晩漬け、乾燥用のネットを購入し、ぶらさげて、室内の温度を下げて扇風機を設置して・・・と、かなりの手間がかかるのにも関わらず、室温調整を間違えると生臭くなってしまったり、乾燥が足りなかったり、環境要因に大きく左右されるため再現性に疑問が残りました。
そして、衛生面でも、緻密な温度管理が必要になるので、下処理は断念することとなりました。
レジェンドがおっしゃっていた下処理の難しさを痛感するのでした。
サーモンをカットする
ということで、下処理を飛ばして、キャンプ場にやってきました。
ドンッ!
肝心のサーモンは、王子サーモン工場から下処理済を取り寄せました(笑)
レジェンドにあらためて「下処理断念」の報告をした際に、怒られるかと思ったのですが、「だから難しいって言っただろ~」とむしろ喜んでいたように聞こえたのは、ここだけの話。
本題の冷燻チャレンジに戻りたいと思います。
画像のサーモンはかなり魚体が小さいサーモントラウトですが、それでも横幅35cmほどありました。
【重要】サーモンは冷凍状態でキャンプ場に持ち込む。
冷凍状態のまま燻製を行う必要があるので、キャンプ場入り当日の昼過ぎまでには処理したいと思います。
サーモンは、冷凍のまま三等分にカットしてみました。
スモーク器を組み立てる
ボウルに燻製チップを入れます。チップの量は片手で軽く握る程度。今回使用している燻製チップは王子サーモン秘伝のチップで、画像でわかるとおり非常に細かく粉砕されたものになります。実は、王子サーモンではその昔、北海道の厩舎で馬を運動させる際のエネルギーで挽いた木材チップを使用していた経緯があり、今も一部の製品で細かい燻製チップを使用しています。
チップの上にゴミ取りネットをかぶせます。
ネットの上に浅い皿を載せます。
皿の上に氷を載せます。
ボウルに網と、その上に冷凍サーモンを載せます。
表面に水分が出ている場合は、キッチンペーパーで軽く拭いてください。
最後に、ボウルで蓋をします。
ガスバーナーか、焚火台の上に置いて準備完了です。
サーモンを冷燻する
1.中火にかけて20秒ほどで煙が立ち込めます。煙が立ってから2分ほど加熱。
(煙はボボボボ!と漏れ出てきます)
2.弱火にして、3分ほど加熱。
(煙は↑の画像のように湯気のように漏れ出てきます)
【注意点】
・風が強くて火が安定していないと、燻煙も安定しません。
・火をつけて以降の作業は耐火グローブを着用して行っています。ボウルはとても熱くなります。
スモークサーモンのできあがり!中は半解凍状態ですが、表面がほんの少し色が変わって火が通ってしまいました。熱源からサーモンが近いほど温度も高くなるので、火元からサーモンをいかに離して温度を上げないかが冷燻の難しさです。
光の反射は、サーモンの脂です。ここに香りが乗っています。燻製時間は短いですが、十分に燻製の香りが楽しめます。
燻製時間と火の強さの検証
【CASE1 】一気に燃やして少し蒸らす作戦
強火1分
弱火1分
蒸らし2分
結果…火は通らないが燻製の香りは弱め。
【CASE2】じっくり燻製作戦
中火2分
弱火3分
結果…やはり表面に薄く火が通る。十分な燻製の香り。バランスが良い。
【CASE3】千里の道も一歩から作戦
弱火7分
結果…表面は薄く火が通る。CASE2より香りが強い。強すぎて少しえぐみがある部位も。弱火5分も次回はチャレンジしてみたい。
【CASE4】番外編:温燻にチャレンジ
弱火15分(氷無し)
結果…完全解凍され、半分火が通っているのかいないのかグニャっとした触感で正直微妙。また、燻製が強すぎてすっぱい、そしてえぐみも出てしまう。冷凍状態から温燻はできないことが判明。温燻は別の機会にチャレンジします。
サーモンをスライスする
もしかしたら、ここが一番難しいかもしれません・・・。
直角の断面を少しだけ斜めに整えます。
最初の断面を整えたら、あとは皮を残しつつ等間隔でスライスしていきます。
皮つきサーモンの場合、最初に皮をひいても、スライスしてから皮をひいても、どちらでも構いません。
(手を切ってしまうのではないかと不安な場合は軍手を着用してください。ちなみに余った皮は直火で焼いて食べるとこれも美味しいです)
サーモンの脂でつるつると滑ってしまうことが難しい要因であると感じました。キッチンペーパーを下に敷くと少し安定します。
また、素手だと手が脂だらけになってしまいますし、衛生的でもないので、ゴム手袋を片手分でも持っていくと便利だと思いました。
スライス時には半解凍状態で、中の方は凍っています。ここから10分ほど保冷バッグに戻して、完全解凍し、燻煙をなじませます。
スライスを盛り付ける
スライスをお皿に並べて、森の中で撮影しました。
あまり見たことがない光景ではないでしょうか(笑)
でも、森や草の緑に、サーモンのオレンジが映えて、とても綺麗でした。
写真が得意な方は、もっと映えさせることが可能だと思います・・・。
今回は簡単にスモークサーモンとサラダのマリネにしました。
材料は、スモークサーモン、野菜、オリーブオイル、岩塩、ネーブルオレンジ、以上です。
スモークサーモンと言えば「レモン」というイメージがあるかと思いますが、実はオレンジとの相性が非常に良いです。サーモンは酸味と適度な果糖でさらに魅力が増すので是非一度お試しください。
画像のオレンジは最後に果汁を絞って、サラダにかけます。
大自然の中だと、シンプルな味付けがより一層美味しく感じました。
番外編:余ったサーモンでパスタをつくる。
市販の冷凍パスタと、余ったサーモンをスキレットで加熱します。
サーモンが焦げ付かないように、少しオリーブオイルを垂らしました。
良い感じにサーモンに火が通ったら、
大葉をかけて完成!
美味しかった~!
番外編:余ったサーモンをルイベにする
3等分サーモンの1つをさらに半分にカットして、縦にザクザク切っていきます。(冷凍状態であれば、簡単に切れます)
サーモンのルイベの完成です。醤油でお召し上がりください。
最後に
自宅でサーモンの下処理を完遂することができず無念でしたが、もし良い情報をお持ちの方がおられましたらご教示願います!
有名なアウトドアメーカーから、きちんとした燻製用の器具が発売されているので、もし本格的にスモークサーモン作りにチャレンジしたいという方はそちらをオススメします。
(基本的に温燻がメインなので、冷燻したい場合は氷で空気を冷やすなどの工夫が必要です)
100円均一の器具は本来想定されている使用方法ではないので、それぞれの取り扱いは自己責任でお願いいたします。
【100円均一で購入した器具リスト】
・ボウル(直径20cm)×2
・ゴミ取りネット
・アルミ食器
・網
【その他に必要なもの】
・氷
・まな板
・切れ味のいい包丁 or ナイフ
・保冷ボックス
・耐火グローブ
・ガスバーナー or 焚き火台
【あったら便利なもの】
・ゴム手袋
・スキレット
・クリップ(ボウル2つを留めておくために)